親の介護が現実になったとき、多くの人が最初に戸惑うのが「介護の相談先は、どこが正解なのか分からない」という問題です。
地域包括支援センター、ケアマネジャー、市区町村の窓口、医療機関、職場の上司や人事。
相談先はいくつもあるのに、「今の自分は何を、誰に相談すればいいのか」が分からず、結局誰にも相談できないまま、不安だけを抱え続けてしまうケースは少なくありません。
介護の悩みは、制度や手続きだけで完結するものではありません。
仕事との両立、家族との関係、自分自身の気持ち——
複数の問題が重なっているからこそ、相談先を選ぶこと自体が難しくなります。
相談したつもりでも「それは別の窓口です」と言われ、余計に疲れてしまった経験がある方もいるでしょう。
本記事では、介護の状況や悩みの種類ごとに、どこに相談すればよいのかを整理しながら、「迷ったときにどう考えればいいのか」という視点を丁寧に解説します。
一人で抱え込まず、今の自分に合った相談先を見つけるための道しるべとしてお読みください。
介護の相談先が分からなくなる理由
介護が始まったとき、「誰かに相談しなければ」と思いながらも、実際には多くの人が最初の一歩で立ち止まってしまいます。
その背景には、介護の悩みが一つではなく、複数の問題が同時に重なっているという現実があります。相談先が分からなくなるのは、情報不足だけでなく、悩みの整理ができていないことが大きな要因です。
相談内容が一つではなく、整理しきれない
介護に関する悩みは、「制度について知りたい」「サービスを使いたい」といった実務的なものだけではありません。
実際には、仕事との両立への不安、家族との役割分担、将来への心配、自分自身の疲労や気持ちの揺れなど、複数の問題が同時に存在しています。そのため、「これは制度の相談なのか」「仕事の悩みなのか」「気持ちの問題なのか」と切り分けができず、相談先を選べなくなってしまいます。
本来、相談とは悩みが整理されてから行うものではありません。しかし多くの人は、「何を聞けばいいか分からない状態では相談してはいけない」と思い込み、結果として誰にも話せないまま時間が過ぎてしまいます。相談内容が整理できていないこと自体が、相談を妨げる壁になっているのです。
制度と気持ちの問題が混ざっている
介護の相談先を考える際、多くの人はまず制度やサービスを思い浮かべます。しかし実際に苦しさを感じている原因は、制度の不足ではなく、「このまま仕事を続けられるのか」「自分だけが負担を抱えているのではないか」といった感情面にあることも少なくありません。
制度の窓口に相談しても、気持ちの問題までは扱ってもらえず、「間違った相談先だったのでは」と感じてしまうケースもあります。制度と感情が絡み合っている状態では、どちらか一方だけを扱う相談先では解決した感覚を得にくくなります。その結果、「相談しても意味がなかった」と感じ、次の相談に踏み出せなくなってしまうのです。
「迷惑をかけたくない」という思いが相談を遅らせる
相談先が分からなくなる背景には、「人に迷惑をかけたくない」という気持ちも大きく影響しています。忙しい職場に相談するのは気が引ける、家族に心配をかけたくない、専門家に相談するほどではないかもしれない——そうした遠慮が積み重なり、結果として誰にも相談できない状態に陥ります。
特に40代・50代の会社員は、「自分で何とかすべき」という意識が強く、相談を後回しにしがちです。
しかし、介護の問題は一人で抱え込むほど複雑になりやすく、状況が悪化してから初めて相談するケースも少なくありません。相談が遅れる理由には、情報不足だけでなく、こうした心理的なブレーキがあることを理解しておく必要があります。
まず相談すべき公的な窓口
介護の相談先として、最初に思い浮かぶのが公的な窓口です。公的機関は、制度やサービスの情報を中立的な立場で提供してくれるため、「何も分からない状態」から相談を始めるには適しています。ただし、公的な窓口にもそれぞれ役割や得意分野があり、相談内容によって向き・不向きがあります。ここでは代表的な相談先と、その特徴を整理します。
地域包括支援センターで相談できること
地域包括支援センターは、高齢者やその家族を支援するための身近な総合相談窓口です。要介護認定を受けていない段階でも相談でき、介護保険制度の概要や、今後想定される支援の流れについて説明を受けることができます。「親の様子が少し心配」「これから何が必要になるのか分からない」といった初期段階の不安を相談する場として適しています。
地域包括支援センターの役割は、制度や地域資源の案内が中心です。
仕事との両立や、自分自身の気持ちの整理まで踏み込んだ相談は、時間的・役割的に難しい場合もあります。そのため、「制度の全体像を知りたい」「どこにつなげばいいか教えてほしい」といった目的で利用すると、満足度が高くなります。
ケアマネジャーに相談できる範囲と限界
要介護認定を受けた後は、ケアマネジャーが介護サービスの窓口となります。
ケアマネジャーは、本人の状態に合わせたケアプランを作成し、訪問介護やデイサービスなどの調整を行う専門職です。介護サービスの具体的な使い方や、生活上の困りごとについて相談できる点は大きなメリットです。
ただし、ケアマネジャーの主な役割は、あくまで「介護を受ける本人の生活支援」です。そのため、家族である相談者の仕事の悩みや、将来のキャリアについて深く相談することは難しい場合があります。介護サービスに関する実務的な相談には向いていますが、相談内容によっては別の窓口が必要になることも理解しておく必要があります。
市区町村窓口・医療機関の役割
市区町村の窓口では、介護保険の申請手続きや各種制度の案内を受けることができます。
また、医療機関では、病状や今後の見通しについて専門的な説明を受けることができます。これらの窓口は、制度や医療の観点から正確な情報を得るために重要な存在です。
一方で、これらの窓口も相談の範囲は限定的です。「この情報をどう生活や仕事に反映させればいいのか」「自分はどう判断すればいいのか」といった整理までは対応が難しいことも多く対応しきれない場合も。
公的窓口は、情報を集める場所として活用し、その情報をどう使うかは別の視点で考える必要があります。
仕事との両立に関する相談先
介護が始まると、多くの人が「仕事はどうすればいいのか」という壁に直面します。公的制度や介護サービスの相談先は見えてきても、仕事との両立については「どこに相談すればいいのか分からない」と感じやすい領域です。ここでは、仕事に関する相談先と、それぞれの注意点を整理します。
職場(上司・人事)に相談するときの現実
仕事との両立を考える際、最初に思い浮かぶ相談先は職場です。
上司や人事に相談することで、勤務時間の調整や制度の利用など、具体的な対応につながる可能性があります。一方で、「どこまで話していいのか分からない」「評価に影響しないか不安」と感じる人も少なくありません。
職場への相談は、内容とタイミングが重要です。介護の全てを説明する必要はなく、「業務に影響が出る可能性がある点」を整理して伝えることが現実的です。ただし、職場はあくまで業務を回す立場であり、個人の気持ちや将来のキャリアまで踏み込んだ相談は難しい場合があります。
職場相談は「調整のための相談」であることを理解しておくことが大切です。
社内制度だけでは解決しないケース
多くの企業には、介護休業や時短勤務などの制度があります。
しかし、制度があることと、実際に使えることは別問題です。業務内容や人員体制によっては、制度を使いにくい現実もあります。また、制度を利用しても「その後どう働き続けるのか」という不安が解消されないケースも少なくありません。
社内制度は、介護と仕事を両立するための一つの手段にすぎません。制度の利用だけで全てが解決すると期待してしまうと、現実とのギャップに苦しむことになります。制度で補えない部分があることを前提に、別の視点からの整理が必要になる場合もあります。
職場に話せない人が抱えがちな悩み
職場に相談できない、あるいは相談したくないと感じる人も多くいるでしょう。
その背景には、「弱音を吐けない」「迷惑をかけたくない」「自分で何とかすべきだ」という思いがあります。しかし、誰にも話せないまま抱え込むことで、仕事と介護の両立はより難しくなります。
職場に話せない場合でも、それは間違いではありません。ただし、その分、別の場所で状況や気持ちを整理する必要があります。仕事の悩みは、必ずしも職場だけで解決するものではなく、第三者と一緒に考えることで初めて見えてくる選択肢もあります。職場に相談できないこと自体が、次の相談先を考えるサインになることもあります。
どこに相談してもモヤモヤが残るとき
公的窓口や職場、家族に相談してみたものの、「話は聞いてもらえたはずなのに、気持ちが軽くならない」「結局どうすればいいのか分からないまま終わった」と感じることがあります。相談そのものが間違っていたわけではなく、相談先と相談内容が噛み合っていない場合、こうしたモヤモヤが残りやすくなります。ここでは、その状態に陥りやすいサインと背景を整理します。
相談先と悩みの種類がズレている
介護の相談には、「制度を知りたい」「手続きを進めたい」といった実務的なものと、「この先どう判断すればいいのか分からない」「不安が強い」といった整理が必要なものがあります。制度の窓口に気持ちの悩みを持ち込んだり、家族に制度の判断を求めたりすると、話が噛み合わず、満たされない感覚が残ります。
相談先が悪いのではなく、悩みの種類に合った場所を選べていないことが原因の場合も多いのです。「相談したのに解決しなかった」と感じるときは、内容と相談先がズレていなかったかを振り返ることが大切です。
答えを求めすぎて疲れてしまう状態
介護の悩みを抱えていると、「正解を教えてほしい」「どうすべきか決めてほしい」と強く思ってしまうことがあります。しかし、介護と仕事の両立には、一つの正解が存在しないことがほとんどです。
答えを求めて相談を繰り返すほど、「結局自分で決めなければならない」という現実にぶつかり、かえって疲れてしまう人もいます。この状態では、どんな助言を受けても納得感が得られにくく、相談すること自体が負担になってしまいます。答え探しに疲れていると感じたときは、方向を変える必要があります。
「整理する相談」が必要になっているサイン
相談後にモヤモヤが残るときは、答えや解決策ではなく、「状況や気持ちを整理する場」が必要になっているサインかもしれません。何が一番つらいのか、何に迷っているのか、何を優先したいのかが言葉になっていない状態では、どんな情報も活かしきれません。
整理する相談では、すぐに結論を出すことを目的としません。話しながら考えを言語化し、頭の中を整えることで、自然と次に取るべき行動が見えてきます。モヤモヤが続いているときほど、「解決」ではなく「整理」を目的とした相談が役立つ場面があります。
合同会社ENTAKUという相談先
介護の相談先は数多く存在しますが、「制度」「手続き」「福祉サービス」だけでは整理しきれない悩みも確かにあります。
ENTAKUは、介護そのものを解決する場ではなく、介護と仕事をどう両立し、どう生きていくかを一緒に考える相談先です。ここでは、ENTAKUの相談がどのような場面で力になるのかを具体的にお伝えします。
制度と気持ちの“あいだ”を整理する対話
ENTAKUの相談で重視しているのは、「何を使えるか」よりも「今、何に困っているのか」を丁寧に言葉にすることです。介護保険や休業制度は知っていても、それを使うべきかどうか迷っている段階では、情報だけでは前に進めません。
対話を通じて、介護の状況、仕事への思い、家族との関係、不安の正体を一つずつ整理していくことで、自分の中で優先順位が見えてきます。ENTAKUは、制度と感情のあいだに立ち、判断の土台を整える役割を担っています。
答えを押しつけない「伴走型」の相談
ENTAKUの相談では、「こうすべきです」と結論を押しつけることはしません。介護と仕事の両立には、その人の価値観や家庭状況、職場環境が深く関わるため、他人の正解がそのまま当てはまるとは限らないからです。
一緒に考え、選択肢を並べ、迷いながら進む。そのプロセス自体を支えるのがENTAKUのスタイルです。今すぐ答えが出なくても構いません。「考えていい」「立ち止まっていい」という前提があることで、相談する側の心の負担は大きく軽減されます。
話すことで「続けられる形」が見えてくる
介護と仕事を続けるために必要なのは、我慢や根性ではありません。無理をして続けるのではなく、「続けられる形」に整えていく視点が欠かせません。
ENTAKUでは、話す中で自分の限界ラインや譲れない条件が自然と明確になっていきます。その結果、制度の使い方、職場への伝え方、家族との関わり方が具体化し、現実的な一歩を踏み出しやすくなります。相談は、弱さの表明ではなく、続けるための準備です。
まとめ|「どこに相談するか」で、介護と仕事の行方は変わる
介護が始まったとき、多くの人が最初につまずくのは「何をするか」ではなく、「誰に、何を相談すればいいのか分からない」という点です。
制度の窓口は制度の話しかできず、職場は仕事の話しかできない。
その狭間で、仕事を続けたい気持ちや、もう限界かもしれないという本音は、どこにも出せないまま抱え込まれがちです。
介護と仕事の両立は、正解を探す問題ではありません。
今の状況を整理し、自分にとって無理のない選択肢を見つけていくプロセスです。
そのためには、「答えをもらう相談」ではなく、一緒に考え、迷いながら進める相談先が必要になります。
一人で耐えることが、両立ではありません。相談することは、投げ出すことでも、弱さでもなく、
これからも働き続けるための現実的な行動です。