親の介護が始まったとき、多くの人が最初に抱くのは「このまま仕事を続けられるのだろうか」という不安です。

介護と仕事の両立は、気合いや根性で乗り切れるものではありません。
制度を知っていても、職場にどう伝えるか分からない。
将来が見えず、判断を先延ばしにしているうちに心身が限界に近づいてしまう。
そうした状況に置かれる40代・50代の会社員は、決して少なくありません。

本記事では、「介護と仕事を続ける」という選択肢を現実的に考えるために、
・両立が難しくなるポイント
・続けるために必要な整理の視点
・一人で判断しないための考え方
を中心に解説します。

仕事を辞めるかどうかを決める前に、立ち止まって状況を整理することが、後悔しない選択につながります。

介護と仕事の両立が急につらくなる理由

介護は段階的に負担が増え、限界に気づきにくい

介護と仕事の両立が難しくなる最大の理由は、介護の負担が「少しずつ、確実に」増えていく点にあります。
多くの場合、介護はある日突然フルタイムで始まるわけではありません。最初は通院の付き添いや書類手続き、見守りといった軽い関わりから始まり、「まだ自分でできている」「今は何とか回っている」と感じながら日常が続いていきます。しかし、その裏で負担は確実に積み重なっています。

介護の特徴は、状態が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、全体としては重くなっていくことです。そのため、「前も乗り切れたから今回も大丈夫」と判断しやすく、無理をしている自覚が遅れがちになります。仕事と介護を同時に抱えていると、忙しさの中で自分の状態を振り返る余裕がなくなり、「気づいたときには限界に近づいていた」というケースも少なくありません。

両立が突然破綻したように感じる背景には、本人の弱さではなく、この“段階的に進む介護の構造”があります。

まずは「介護は少しずつ重くなるもの」という前提を理解することが、無理を続けないための第一歩になります。

仕事側の調整が後回しになりやすい

介護が始まったとき、多くの人はまず家庭内の対応に意識を向けます。親の体調や生活の変化に戸惑いながら、「今はとにかく目の前のことをこなさなければならない」と感じるためです。

その結果、仕事について考える余裕がなくなり、働き方や制度の確認、職場への相談が後回しになりがちになります。「落ち着いたら話そう」「迷惑をかけたくない」という思いが強いほど、仕事側の調整は遅れていきます。

しかし、仕事の負担は介護の進行に合わせて自然に軽くなるわけではありません。
業務量や責任は変わらないまま、介護だけが上乗せされていくため、両立は徐々に苦しくなっていきます。制度が存在していても、事前に準備や相談をしていなければ、必要なタイミングで使えないことも少なくありません。

仕事側の整理を後回しにすることは、一時的には乗り切れても、長期的には自分を追い込む要因になります。介護と仕事を続けるためには、「家庭が落ち着いてから」ではなく、「負担が増え始めた段階」で仕事側の調整を考える視点が欠かせません。

精神的な緊張が常態化し、判断力が奪われていく

介護と仕事を同時に抱える状態が続くと、常に気が張った状態が日常になります。
「いつ連絡が来るか分からない」「急に呼び出されるかもしれない」「職場に迷惑をかけていないだろうか」といった不安が頭から離れず、心が休まる時間がなくなっていきます。たとえ身体は職場にいても、意識の一部は常に介護のほうに向いており、完全に仕事に集中できない感覚を覚える人も少なくありません。

この緊張状態が長引くと、疲労は蓄積しているのに「休んだ気がしない」「眠っても回復しない」と感じるようになります。その結果、物事を冷静に考える力が落ち、「もう無理かもしれない」「辞めるしかないのでは」という極端な考えに傾きやすくなります。

介護と仕事の両立がつらくなる背景には、時間や体力の問題だけでなく、この“緊張が常態化した状態”があります。
判断力が奪われているときほど、大きな決断を急いでしまいがちです。だからこそ、精神的な負担に気づき、立ち止まることが重要になります。

「続けたいのに続けられない」と感じる瞬間

突発的な対応が増え、生活の主導権を失う

介護が進むにつれて多くの人が直面するのが、突発的な対応の増加です。

急な体調悪化、予定外の通院、サービス調整の連絡などが重なり、生活全体が常に不安定な状態になります。仕事のスケジュールを立てても、その通りに進まないことが増え、「また迷惑をかけてしまった」という気持ちを繰り返し抱くようになります。

この状態が続くと、自分で生活をコントロールできていない感覚が強まり、仕事を続ける自信そのものが揺らいでいきます。両立が難しく感じられる瞬間は、能力や意欲の問題ではなく、生活の主導権を失っている感覚から生まれることが多いのです。

職場に理解されていないと感じ始める

介護について職場に相談していても、「本当に理解されているのだろうか」と不安を感じる瞬間があります。

忙しそうな上司、制度はあるが使いづらい雰囲気、同僚への遠慮などが重なり、「これ以上は言えない」と感じてしまう人も少なくありません。そうした小さな違和感が積み重なると、孤立感が強まり、「ここでは続けられないのではないか」という思いに変わっていきます。

職場とのすれ違いは、両立を諦める大きな引き金になりやすいポイントです。

判断を急がなければならないと追い込まれる

介護と仕事を続ける中で、「このままでいいのか」「今決めなければいけないのでは」と判断を迫られている感覚に陥ることがあります。

しかし、情報も整理できていない状態での決断は、不安をさらに大きくすることが少なくありません。

本来は段階的に考えられるはずのことを、一気に決めようとすることで視野が狭まり、仕事を辞める選択肢だけが現実的に見えてしまいます。「今すぐ決めなければならない」という思い込みそのものが、両立を難しくしている場合もあります。

介護と仕事を続けるために必要な整理

介護の「今」と「これから」を分けて考える

介護について考えるとき、多くの人は将来の不安を一度に抱え込みがちです。

しかし重要なのは、「今すぐ必要な対応」と「将来起こり得ること」を切り分けて考えることです。

今の介護状況に本当に必要な支援は何か、数か月後に見直せばよいことは何かを整理するだけでも、心の負担は大きく軽減されます。将来を見通すことは大切ですが、先の不安を現在の負担に変えてしまわない視点が、両立を続けるためには欠かせません。

仕事の条件を理想ではなく現実で確認する

仕事を続けるかどうかを考える際、「こうあるべき」「迷惑をかけてはいけない」という理想が先行しがちです。しかし、実際に重要なのは、今の業務内容、裁量の有無、調整できる余地がどこにあるのかといった現実的な条件です。

制度があるかどうかだけでなく、相談できる人がいるか、業務の代替が可能かなども含めて整理する必要があります。現実を正確に把握することが、続けるための判断材料になります。

自分自身の限界ラインを言葉にする

介護と仕事を両立しようとする中で、最も後回しにされやすいのが「自分自身の状態」です。睡眠時間が削られていないか、常に気が張ったままになっていないか、誰にも本音を話せず抱え込んでいないか。こうしたサインが積み重なっていても、「まだ大丈夫」「自分が頑張れば何とかなる」と無理を続けてしまう人は少なくありません。

しかし、限界はある日突然訪れるのではなく、気づかないうちに越えてしまうものです。

だからこそ重要なのが、「これ以上は無理」という自分なりの限界ラインを、感覚のままにせず言葉にすることです。疲れている理由、つらさの正体、不安の中身を整理することで、初めて調整や相談という選択肢が現実のものになります。

もし「自分でもどこが限界なのか分からない」「考えようとすると不安が強くなる」と感じているなら、一人で整理しようとしなくて大丈夫です。第三者と一緒に言葉にしていくことで、状況が落ち着いて見えてくることもあります。

合同会社ENTAKUでは、決断を迫るのではなく、今の状態を整理することから面談を行っています。限界を迎える前に、自分の状態を確認する場として、相談という選択を考えてみてください。

ENTAKUが伴走する「介護と仕事を続けるための相談」

決断を迫られない。「整理する」ことから始める支援

合同会社ENTAKUの相談で最も大切にしているのは、「今すぐ答えを出さなくていい」という姿勢です。介護と仕事の両立に悩む方の多くは、「辞めるか、続けるか」「このままでいいのか」と決断を迫られている感覚の中で、強い不安を抱えています。
しかし、十分な整理ができていない状態での判断は、後悔や迷いを残しやすくなります。

ENTAKUでは、まず現在の介護状況、仕事の負担、気持ちの状態を一つずつ言葉にしていきます。何が一番つらいのか、どこで無理をしているのか、何が分からないのかを整理することで、「判断しなければならない」という圧迫感が自然と和らいでいきます。

多くの相談者が、「決めなくていいと思えたことで気持ちが楽になった」と話しています。整理すること自体が、両立を続けるための重要な支援なのです。

介護・仕事・キャリアを切り離さずに考える伴走

ENTAKUの支援の特徴は、介護、仕事、キャリアを別々に扱わない点にあります。

介護の相談は福祉の話、仕事の悩みは職場の話、と切り分けてしまうと、現実の生活とかけ離れた結論になりがちです。実際には、介護の状況が仕事に影響し、仕事の選択が将来のキャリアや生活に影響を与えます。

ENTAKUでは、国家資格キャリアコンサルタントの視点から、今の働き方が今後どうつながっていくのかを一緒に考えます。「今は続けたいが、この先はどうなるのか」「一時的な調整で乗り切れるのか」といった中長期の視点を持つことで、目の前の不安に押し流されにくくなります。

短期的な正解を押し付けるのではなく、相談者自身が納得して選べる形を見つけるための伴走を行っています。

一人で抱え込まないための“話せる場”としての面談

介護と仕事の両立に悩む方の多くは、「誰にも本音を話せていない」状態にあります。家族には心配をかけたくない、職場には迷惑をかけたくない、その結果、自分の中に不安や迷いを溜め込んでしまいます。

ENTAKUの面談は、そうした思いを安心して言葉にできる“話せる場”であることを大切にしています。

話すことで、頭の中で絡まっていた考えが整理され、「自分はここが一番苦しかったのだ」と気づく方も少なくありません。

また、第三者と一緒に考えることで、自分では思いつかなかった視点や選択肢が見えてくることもあります。ENTAKUは、限界を迎える前に立ち止まり、整理し、次の一歩を考えるための場所です。一人で抱え込まず、伴走してくれる存在がいることが、介護と仕事を続ける大きな支えになります。

まとめ|「続けるかどうか」は、一人で決めなくていい

介護と仕事の両立は、努力や覚悟だけで乗り切れるものではありません。介護は段階的に負担が増え、仕事や生活と重なり合うことで、気づかないうちに心身を消耗させていきます。「続けたいのに続けられない」と感じる背景には、本人の弱さではなく、状況を整理する余裕が失われている現実があります。

大切なのは、「辞めるか、続けるか」を急いで決めないことです。介護の今とこれからを分けて考え、仕事の現実的な条件を整理し、自分自身の限界ラインを知ることで、選択肢は一つではないことに気づけます。判断を固定せず、段階的に考えることが、結果的に仕事を続ける可能性を広げてくれます。

また、介護と仕事の両立は、一人で抱え込むほど難しくなります。家族にも職場にも言えない思いを溜め込むことで、孤立感や不安は大きくなっていきます。誰かと一緒に整理し、言葉にするだけでも、状況の見え方は大きく変わります。

介護と仕事を続けるかどうかは、「今すぐ答えを出すべき問題」ではありません。限界を迎える前に立ち止まり、整理し、次の一歩を考えることができます。安心して話せる場があることを知っておくことが、あなた自身の生活とキャリアを守る力になります。