親の介護が始まると、多くの人が最初に戸惑うのが「介護保険サービスにはどんな種類があるのか」という点です。
デイサービス、訪問介護、ショートステイ——名前は聞いたことがあっても、実際にどのような人が使えるのか、どんな支援が受けられるのかを明確に理解している人は多くありません。結果として、「制度が複雑すぎて何を選べばいいかわからない」「サービスを使わずに家族で抱え込んでしまう」というケースも少なくないのです。
介護保険制度は、本来「介護する側・される側のどちらも支える仕組み」です。正しく知り、適切に活用すれば、介護者の負担を軽減しながら、仕事と介護の両立も実現できます。
本記事では、介護保険サービスの種類や仕組み、利用の流れをわかりやすく整理し、さらに全国対応でキャリア・介護支援を行う 合同会社ENTAKU がどのようにサポートできるのかをご紹介します。
介護保険サービスとは——しくみと目的を知る
介護保険制度の基本構造
介護保険制度は、2000年に始まった「高齢者の介護を社会全体で支える仕組み」です。加入者が保険料を納め、必要なときに介護サービスを利用できる社会保険方式が採用されています。
保険の対象は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳〜64歳で特定疾病により介護が必要になった「第2号被保険者」です。運営主体は市区町村で、被保険者が納める保険料と国・自治体の税金で制度が成り立っています。
要介護認定を受けると、必要な介護度に応じて利用できるサービスが決まり、利用者は1〜3割の自己負担で支援を受けられます。この制度は、介護を家族任せにせず「必要な支援を誰もが公平に受けられる社会」を目指して設計されています。
誰が利用できるのか(対象者と申請の流れ)
介護保険サービスを利用するには、市区町村の窓口で「要介護認定」を申請することが出発点です。申請後、訪問調査と主治医の意見書をもとに介護の必要度が判定され、「要支援1・2」または「要介護1〜5」に区分されます。
この認定結果に基づき、介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者や家族と話し合いながら「ケアプラン(介護計画)」を作成します。どの事業所にどのサービスをどの頻度で利用するかを定める重要なプロセスです。
申請から認定まではおおよそ1か月程度かかりますが、この期間中でも地域包括支援センターに相談すれば、必要な介護用品の貸与や一時的なサポートを受けることが可能です。
「自立支援」を目的としたサービス設計とは
介護保険サービスの根本理念は、「自立支援」です。単に介護を“してもらう”のではなく、「できることを維持・回復する」ためのサポートとして設計されています。
たとえば、リハビリを取り入れたデイサービスや、家庭での生活を支える訪問リハビリなどは、自分の力で生活を続けることを目指した仕組みです。
また、介護者にとっても、サービスを活用することで「仕事を休まなくても介護が続けられる」「介護疲れを防げる」というメリットがあります。つまり、介護保険は本人の尊厳を守るだけでなく、家族の生活とキャリアを支える制度でもあるのです。
介護保険サービスの種類一覧——自宅・施設・地域型の3分類
在宅で利用できる「居宅サービス」
居宅サービスとは、住み慣れた自宅での生活を維持しながら受けられる介護サービスのことです。代表的なのが「訪問介護(ホームヘルプ)」で、ヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・掃除・買い物などの日常生活をサポートします。
また、通所介護(デイサービス)では、入浴・食事・リハビリなどを受けながら、他の利用者との交流もできます。これは介護者の休息(レスパイト)にもつながります。
さらに、訪問看護や訪問リハビリを組み合わせることで、医療的なケアや機能維持のサポートも可能になります。居宅サービスは「自宅で介護を続けたい」「仕事と両立したい」という家庭に最も利用される形態です。
施設で受ける「入所系サービス」
入所系サービスは、介護が重度になったり、家庭での介護が難しい場合に利用される形態です。代表的なものには「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」などがあります。
特養は長期的な生活の場として、入浴や排せつ、食事の介助を中心に日常生活を支えます。老健は在宅復帰を目指すリハビリ中心の施設で、一定期間の入所が前提です。介護医療院は医療的管理が必要な高齢者のための施設で、看護師による医療ケアも受けられます。
これらの施設は、家庭での介護が限界に達した場合や、介護者の体調・仕事の状況に応じて活用できる選択肢として重要です。
地域密着型サービスとは?特徴と対象者
地域密着型サービスは、「住み慣れた地域で生活を続けたい」という高齢者の希望に応えるための仕組みです。市区町村が主体となって運営・監督し、地域の実情に合わせて提供されています。
代表的なサービスには、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型通所介護、グループホームなどがあります。小規模多機能型は、訪問・通所・宿泊の機能を一体化しており、介護者や利用者のニーズに柔軟に対応できるのが特徴です。
また、認知症対応型サービスでは専門スタッフが少人数で対応し、症状に合わせたケアを提供します。これらの地域密着型サービスは、地域と家庭が協力して高齢者を支える仕組みであり、利用者・家族の双方に安心をもたらす存在です。
要介護度別に見たサービス利用の目安
要支援と要介護の違い
介護保険サービスを利用するうえで最初に理解しておきたいのが、「要支援」と「要介護」の違いです。
要支援1・2 は、生活の一部に支援が必要な段階で、リハビリや運動機能の維持など“自立支援”が中心になります。通所型のデイサービスで体操や栄養指導を受けることで、介護状態の悪化を防ぐことが目的です。
一方、要介護1〜5 は、日常生活全般に介助が必要な状態を示し、数字が大きいほど支援の量や専門性が高くなります。たとえば要介護3以上では入浴・排せつ・食事などの全面介助が必要なケースも多く、訪問介護や施設サービスの併用が一般的です。
この区分を理解することで、利用可能なサービス内容や支給限度額の違いを把握しやすくなります。
支給限度額(月額)とサービス組み合わせ例
介護保険サービスには、要介護度に応じた「区分支給限度基準額(月額上限)」が定められています。たとえば、要支援1は約5万円、要介護5では約36万円が上限です。この範囲内であれば、複数のサービスを組み合わせて利用できます。
たとえば、要介護2の方がデイサービス(週2回)と訪問介護(週1回)を併用したり、要介護4の方がショートステイと訪問リハビリを組み合わせたりすることも可能です。
サービス内容と費用のバランスを見極めるには、介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するケアプランが重要な役割を果たします。利用者自身が上限額を意識しつつ、生活の質を維持できる計画を立てることが大切です。
ケアマネジャーが担う役割
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険制度の「案内人」といえる存在です。要介護認定後、利用者や家族の希望を聞き取りながら、必要なサービスを組み合わせたケアプランを作成します。
また、実際のサービス開始後も状況を確認し、必要に応じてプランを修正する「継続的な伴走役」としての役割を担います。利用者の状態が変化したり、介護者の負担が増えたりした場合も、ケアマネジャーに相談することで迅速な対応が可能です。
自分でサービスを探すよりも、制度や費用面に詳しい専門家に相談することで、より適切で無駄のない利用が実現します。介護を一人で抱え込まず、まずは信頼できるケアマネジャーに相談することが、両立への第一歩です。
仕事と両立するためのサービス活用術
デイサービス・ショートステイの上手な使い方
仕事を続けながら介護を行う場合、デイサービスとショートステイの活用は非常に有効です。
デイサービス(通所介護)は、日中に食事・入浴・リハビリなどを受けられるサービスで、介護者が仕事に集中できる時間を確保できます。また、利用者にとっても、他者との交流や運動機会が増えるため、生活リズムの維持や認知機能の安定に役立ちます。
一方、ショートステイ(短期入所生活介護)は、数日単位で施設に宿泊するサービスです。出張や残業などが避けられない時期に活用することで、介護の継続性を保ちながら無理なく仕事を続けることが可能です。
「毎週決まった曜日だけ」「必要な時だけ」といった柔軟な利用ができる点も、働く世代にとって大きなメリットです。
訪問介護や看護を活かした時間の確保法
在宅での介護と仕事を両立するには、訪問系サービスの上手な使い方が鍵になります。
訪問介護(ホームヘルプ)では、食事・掃除・排せつなどの身体介助や生活援助を受けられるため、家族が仕事で不在の時間帯も安心です。さらに、訪問看護を併用すれば、医療的なケアが必要な場合でも、看護師が定期的に様子を確認してくれます。
また、在宅での介護負担を軽減するために、介護用品の貸与(ベッドや手すりなど)を組み合わせることも効果的です。これにより、介護時間を短縮しつつ安全性を高めることができます。
「自宅で介護を続けながら仕事をしたい」という希望を叶えるには、こうしたサービスを日常生活に自然に組み込む工夫が欠かせません。
レスパイトケアを取り入れてストレスを防ぐ
介護を続けるうえで最も大切なのは、介護者自身が倒れないことです。
レスパイトケア(介護者の休息支援)は、介護疲れやストレスの蓄積を防ぐために欠かせない制度です。デイサービスやショートステイの利用もこの一種であり、定期的に介護から離れる時間を持つことで、心身のリフレッシュにつながります。
また、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すれば、一時的な支援や代替サービスを紹介してもらうことも可能です。
介護と仕事を両立させるには、「休む=悪いこと」という意識を変えることが重要です。自分が健康でいることが、結果として家族の安心にもつながります。
介護保険だけに頼らない支援制度も活用
高額介護サービス費制度とは
介護保険サービスを利用していると、毎月の自己負担が思いのほか大きく感じることがあります。そんなときに活用したいのが「高額介護サービス費制度」です。
この制度は、1か月あたりの自己負担額が一定の上限を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。上限額は所得や世帯構成によって異なり、一般的な所得世帯では月額44,400円が目安です。
申請は市区町村の介護保険課で行い、支給決定後に指定口座へ還付されます。デイサービスや訪問介護などを複数利用しても対象になります。介護費用が家計を圧迫する前に、こうした制度を理解しておくことが大切です。
医療費控除・高額療養費制度の併用
介護が長期化すると、医療との関わりも増えます。その際に役立つのが、医療費控除と高額療養費制度です。
医療費控除では、介護サービスのうち医療的なケアが含まれる部分(訪問看護・通所リハビリなど)は、確定申告で所得控除の対象になります。これにより、所得税や住民税の負担を軽減できます。
一方、高額療養費制度は、医療費が一定額を超えた際に自己負担分が払い戻される仕組みです。介護保険と医療保険の両方を使う場合、「高額医療・高額介護合算制度」を利用すれば、さらに負担を抑えることも可能です。
経済的な不安は介護離職の大きな要因にもなります。こうした制度を知っておくことで、介護を“続けやすくする”環境が整います。
自治体独自の助成制度も確認を
介護に関する支援は、国の制度だけでなく、市区町村が独自に設けているケースもあります。
たとえば、「介護タクシー利用助成」「紙おむつ・福祉用具購入補助」「住宅改修費の上乗せ助成」などが代表的です。これらは自治体によって対象や金額が異なるため、必ず居住地の介護保険課や地域包括支援センターに確認することが重要です。
特に住宅改修費の助成は、手すりの取り付けや段差解消などの工事に活用でき、在宅介護の安全性を高める上で有効です。
「うちの地域では無理だろう」と思い込まず、まずは情報を集めてみることが大切です。思いがけない支援策が見つかることもあります。
ENTAKUが支援する「介護サービスの選び方」
介護と仕事の両立を前提にしたプラン設計
合同会社ENTAKUでは、「介護と仕事を両立したい」という方の現実的な生活設計を支えるため、個別の状況に合わせた相談を行っています。
ENTAKUでは、福祉の制度・介護保険・就労支援の知見を組み合わせ、働く家族の時間や心理的負担も含めたプランづくりを支援します。
介護にかかる時間を見積もりながら、利用できるサービスを整理することで、「仕事を辞めずに介護を続ける」ための現実的な選択肢を一緒に見つけていきます。
制度の“その先”まで踏み込む伴走支援
ENTAKUの支援は、単に制度を紹介するだけではありません。介護保険サービスの内容を理解しても、「実際にどう申請すればいいのか」「職場にどう伝えたらいいのか」といった実務的な壁に直面する方が多くいます。
ENTAKUでは、こうした“制度のその先”にある課題まで丁寧にサポートします。具体的には、ケアマネジャーとの面談前準備や、会社への相談文書の書き方、オンラインでの面談同行など、現場レベルでの支援を行います。
経験豊富な国家資格キャリアコンサルタントが、介護者の立場と職場の現実を両面から理解し、最適なアドバイスを提供します。
全国対応のオンライン面談で安心サポート
ENTAKUの相談は、オンライン(Google Meetなど)を通じて全国どこからでも受けることができます。対面に限らず、在宅勤務の合間や夜間など、ライフスタイルに合わせた柔軟な面談が可能です。
初回相談では、介護の現状や不安を丁寧にヒアリングし、利用できる制度・サービスを具体的に整理します。その後、希望に応じて継続サポートも実施。介護の状況が変化しても、いつでも見直し・再相談ができる伴走体制が整っています。
介護と仕事を両立させるには、一度きりの相談では不十分です。ENTAKUは「継続して寄り添うパートナー」として、安心できる働き方と介護の両立を実現するための道筋をともに考えます。
まとめ——正しく知り、上手に使うことで介護は続けられる
介護保険サービスは、決して特別な人のための制度ではありません。誰もが直面する可能性のある「親の介護」を支えるために、社会全体で整えられた仕組みです。
しかし、制度が複雑でわかりにくいことから、実際に必要なときにうまく活用できていない人が多いのが現実です。その結果、家族の負担が増え、仕事との両立が難しくなってしまうケースも少なくありません。
本記事で紹介したように、介護保険サービスは大きく「居宅」「入所」「地域密着型」に分かれており、状況に応じて柔軟に組み合わせることが可能です。さらに、高額介護サービス費制度や医療費控除、自治体独自の助成などを併用すれば、経済的負担を大幅に軽減できます。
大切なのは、「早めに相談し、正しく選ぶ」こと。制度を理解し、自分に合った使い方をすることで、介護と仕事の両立は現実的に実現できます。
そして、もし迷ったときは、合同会社ENTAKU に相談してみてください。介護とキャリアの両面から、あなたの生活を支える具体的なプランを一緒に考えてくれます。全国どこからでもオンラインで相談可能なので、一人で抱え込む必要はありません。
介護は、支え合いながら続けていくもの。
制度を味方につけ、正しく使うことが、あなたと家族の笑顔を守る第一歩です。