介護で困ったとき、多くの場合、まず必要になるのは介護の相談です。
介護保険サービスをどう使うのか。
どこに相談すればいいのか。
どのような支援が受けられるのか。
こうした情報は、介護を進めていくうえで欠かせません。
ただ、介護の相談をしても、それだけでは整理しきれないことがあります。
介護を受ける人の状態は整理できた。
使える制度やサービスも分かった。
それでも、支える側の気持ちや生活は置き去りになったままになることがあります。
介護の問題を整理することと、介護者本人の状況を整理することは、重なっていても同じではありません。
そこに、家族介護者支援が必要になる理由があります。
1|家族介護者支援は、国の施策でも重要な課題になっている
家族介護者への支援は、個人の気持ちだけの話ではありません。
国の施策の中でも、介護離職防止や家族介護者支援の充実は課題として扱われるようになっています。
たとえば、2016年の「ニッポン一億総活躍プラン」では、「介護離職ゼロ」が目標として掲げられました。
また、厚生労働省の家族介護者支援に関するマニュアルでは、個別相談・支援、多機関や多職種との連携、地域づくりなどが、家族介護者支援の手法として示されています。
背景には、高齢化だけでなく、老老介護、ダブルケア、単身世帯や高齢者のみの世帯の増加、働きながら介護を担う人の増加などがあります。
介護は、介護を受ける人だけの問題ではなくなっています。
支える家族の生活、働き方、心身の状態、これからの人生にも関わる問題になっています。
だからこそ、介護を受ける人への支援と同時に、支える人本人への支援も必要とされています。
2|介護者の負担は、介護作業だけでは見えにくい
介護者の負担というと、身体的な介助や時間的な拘束が思い浮かびやすいかもしれません。
しかし、実際にはそれだけではありません。
精神的な負担。
身体的な負担。
経済的な負担。
仕事や生活との調整。
家族関係の変化。
将来への不安。
こうしたものが、同時に重なっていきます。
家族介護者に関する調査や資料では、精神的・身体的・経済的な負担を感じている介護者が一定数いることが示されています。
疲労感、睡眠不足、イライラなど、日常の不調として表れる負担もあります。
また、介護や看護を理由に仕事を離れる人も毎年一定数います。
つまり、介護者支援が必要なのは、介護作業の量が多いからだけではありません。
介護によって、支える人本人の生活全体が変わっていくからです。
3|介護相談は、介護を受ける人を中心に進みやすい
介護の相談では、まず介護を受ける人の状態が確認されます。
どのような支援が必要なのか。
どのサービスを使うのか。
生活をどう維持するのか。
本人の状態を把握し、必要な制度やサービスにつなぐことは、とても大切です。
一方で、その過程では、支える家族本人の状態は後回しになりやすいことがあります。
誰が通院に付き添っているのか。
誰が連絡を受けているのか。
誰が手続きや買い物を担っているのか。
誰が家族の間に入って調整しているのか。
こうしたことは確認されることがあっても、支える人本人の生活や人生を中心に整理されるとは限りません。
介護を受ける人への支援と、支える人本人への支援はつながっています。
けれど、同じものではありません。
介護相談だけでは整理しきれないことが残るのは、そのためです。
4|支える人の困りごとは、表に出にくい
家族介護者への支援が届きにくい理由の一つに、介護者本人が困りごとを表に出しにくいことがあります。
「家族だからやるのは当然」
「これくらいで相談していいのか分からない」
「もっと大変な人がいる」
「自分が我慢すれば済む」
そう考えてしまうことがあります。
また、介護の悩みは家庭内のこととして扱われやすく、外に出しにくい面もあります。
本人の状態。
きょうだいとの関係。
お金のこと。
仕事や生活のこと。
これまでの家族関係。
こうしたことが絡むと、どこから話せばいいのか分からなくなることがあります。
困っているのに、相談の言葉にならない。
ここに、介護者支援の難しさがあります。
支援が必要な状態であっても、介護者本人の困りごとは表に出にくいのです。
だからこそ、すでに困りごとがはっきりしている人だけでなく、まだ言葉になっていない迷いや混乱にも目を向ける必要があります。
5|制度を知っても、動けないことがある
介護について調べると、制度やサービスの情報はたくさん出てきます。
地域包括支援センター。
ケアマネジャー。
介護保険サービス。
介護休業や介護休暇。
必要な情報はあります。
それでも、実際には動けないことがあります。
制度の説明を聞いても、頭に入らない。
家族と話しても、噛み合わない。
サービスを使った方がいいと分かっていても、気持ちが追いつかない。
自分が何に引っかかっているのか分からない。
これは、知識が足りないからとは限りません。
介護では、本人の状態、家族関係、生活、仕事、経済面、将来への不安が同時に重なります。
そのため、情報を得る前に、まず自分の中で何が起きているのかを整理する必要がある場合があります。
介護相談は必要です。
ただ、その前後で、支える人本人が何に迷い、何を抱え、どこで立ち止まっているのかを整理することも必要になります。
6|介護者本人を支えるには、何を整理するのか
介護者への支援は、介護の方法を教えることだけではありません。
制度を案内することだけでもありません。
支える人本人が、今どのような状態に置かれているのかを整理する支援でもあります。
たとえば、
自分だけが動いている気がする。
家族との役割に偏りがある。
仕事を続けるか迷っている。
働いていなくても、生活全体が介護中心になっている。
施設やサービスを考えることに罪悪感がある。
介護が終わった後の自分の生活が想像できない。
こうした悩みは、介護を受ける人への支援だけでは整理しきれないことがあります。
介護者本人が、何に迷っているのか。
何を抱えているのか。
どこで立ち止まっているのか。
そこを言葉にしていくことが、支える人本人への支援で大切になります。
介護者支援は、答えを代わりに決めることではありません。
支える人本人が、自分の状況を整理し、自分で選べる状態に近づくための支援です。
7|介護の支援相談に関わる中で見えてきたこと
介護の支援相談に関わる中で、本人の状態、家族関係、制度、生活、仕事やこれからのことが同時に重なる場面を見てきました。
介護サービスの話をしているようで、実際には家族の役割の問題が隠れていることがあります。
制度を使うかどうかの話をしているようで、実際には罪悪感や家族との温度差が影響していることがあります。
仕事を続けるかどうかの話をしているようで、実際にはその人自身のこれからの生活や人生の不安が重なっていることもあります。
介護者支援には、介護そのものを理解する視点が必要です。
同時に、支える人本人の生活や人生を見ていく視点も必要です。
ここでは、介護の状況だけを見るのではなく、支える人本人が何を抱え、どこで立ち止まり、これから何を選べる状態に近づきたいのかを一緒に整理していきます。
介護を受ける人のこと。
家族との関係。
制度やサービスのこと。
仕事や生活のこと。
そして、支える人本人のこれからのこと。
それらを切り離さずに見ていくことが、この支援の特徴です。
まとめ
介護相談は、介護を進めるうえで大切な入口です。
しかし、介護の相談だけでは整理しきれないことがあります。
支える人本人の生活。
家族との関係。
仕事や役割。
迷いや葛藤。
これからの人生。
そうしたことは、介護を受ける人への支援だけでは見えにくいことがあります。
介護者本人の迷いや生活、人生まで含めて整理する支援は、まだ十分に届いているとは言えません。
介護そのものを理解したうえで、支える人本人の状況も整理していくこと。
それが、介護者が「介護だけの人」にならないために必要な視点だと考えています。
詳しくは、相談ページでご案内しています。
参考資料
- 厚生労働省「家族介護者支援マニュアル」
- 総務省統計局「就業構造基本調査」
- 厚生労働省「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」
- 内閣府男女共同参画局「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書」