介護保険サービスを利用しても、思っていたほど家族の負担が減らないことがあります。
その理由の一つは、サービスを利用したあとも、通院への対応、連絡調整、体調の確認、急な出来事への対応など、家族に残る役割があるためです。
デイサービスを利用している。
訪問介護も入っている。
ケアマネジャーにも相談している。
それでも、家族の生活はなかなか楽にならない。
そんなとき、「今のサービスでは足りないのではないか」と考えるのは自然なことです。
利用日を増やす。
別のサービスを追加する。
家族でもう少し分担する。
ただ、介護の見直しは、何かを増やすことだけではありません。
今していることを一度並べてみると、減らせること、やめられること、別の方法に変えられることが見つかる場合があります。
介護サービスを使っても家族に残る負担
厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」では、主な介護者には配偶者や子など、家族・親族が多く含まれています。
介護保険サービスが入っていても、家族には次のような役割が残ることがあります。
通院に関する対応。
薬や体調の確認。
書類や金銭に関すること。
ケアマネジャーや医療機関、介護事業所との連絡。
急な体調変化への対応。
本人との日々のやり取り。
一つひとつは小さく見えても、重なると家族の時間や生活を使います。
見る必要があるのは、サービスが入っているかどうかだけではなく、サービスを利用したあとも、家族に何が残っているのかです。
「足りない」だけで考えると、することが増えていく
家族の負担が大きくなったとき、
「デイサービスをもう1日増やした方がいいのではないか」
「訪問介護を追加できないか」
「兄弟姉妹にも、もっと手伝ってもらえないか」
と考えることがあります。
必要なサービスを増やすことが適切な場合もあります。
一方で、サービスが増えれば、予定の管理や事業所との連絡が増える場合があります。家族の分担を増やせば、情報共有や調整が新たに必要になることもあります。
負担を減らすために始めたことが、別の負担を生むこともあります。
そこで、何かを追加する前に一度確認したいのが、今していることは、すべて今も必要なのかということです。
サービスを増やす前に、家族の負担を見直す
介護が続くと、一度始めたことを、そのまま続けている場合があります。
最初は必要だったから。
自分がやった方が早かったから。
親に頼まれたから。
いつの間にか自分の役割になっていたから。
その中には、現在の状況に合わせて見直せるものがあるかもしれません。
毎回、家族が付き添う必要があるのか。
家族がしている連絡を別の方法に変えられないか。
複数の人へ同じ説明を繰り返していないか。
本人ができることまで家族が代わっていないか。
以前から続けている対応が、今も同じ形で必要なのか。
ここでいう「減らす」は、必要な介護を家族だけの判断でやめることではありません。
本人の安全や体調に関わることは、必要に応じてケアマネジャーや医療・介護の専門職と確認しながら考える必要があります。
そのうえで、続けなくてもよいこと、別の方法に変えられることがないかを見るという意味です。
介護サービスは、一度決めたら終わりではない
介護保険制度には、利用者の状態や生活環境の変化を確認し、必要に応じてケアプランや支援内容を見直していく仕組みがあります。
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」第13条では、モニタリングやサービス担当者会議などを通じて、継続的に状況を確認することが定められています。
親の身体状態が変わった。
家族の仕事が変わった。
介護している人の体調が変わった。
本人ができることが増えた、あるいは減った。
こうした変化があれば、以前決めたサービスや家族の役割が、今の生活に合わなくなることがあります。
見直しは、サービスを増やすことだけではありません。
減らす。
別のサービスに変える。
家族がしていたことをサービスにつなぐ。
本人ができることは、本人に任せる。
状況によって方向は変わります。
大切なのは、今の本人と家族の生活に合っているかを改めて見ることです。
家族の負担は、サービスの利用回数だけでは分からない
週に何回サービスを利用しているかだけでは、家族の負担は分かりません。
誰が連絡調整をしているのか。
急な出来事には誰が対応しているのか。
誰が親のことを気にかけ続けているのか。
仕事や自分の生活をどの程度動かしているのか。
今の状態をこのまま続けられるのか。
こうした部分は、サービスの予定表には表れにくいものです。
サービスの利用回数が増えても、家族に残っている役割が変わらなければ、負担感があまり変わらないこともあります。
だからこそ、サービスの量だけではなく、支える人の側に何が残っているかを見る必要があります。
家族に介護負担が偏る理由については、関連記事「親の介護で家族に負担が偏るのはなぜか」でも整理しています。
当相談では、支える人の生活に焦点を当てて整理します
「サービスを使っているのに、なぜこんなに大変なのだろう」
そう感じたとき、サービスを増やすことだけが答えとは限りません。
今使っているサービス。
家族が担っていること。
本人ができること。
仕事への影響。
自分の生活への影響。
それぞれを分けて見ると、足りないものだけでなく、減らせることや変えられることが見えてくる場合があります。
ケアマネジャーは、本人の生活を支えるためのケアプラン作成や介護サービスの調整を担う専門職です。家族の状況も踏まえながら支援を考えます。
当相談では、さらに介護を支えている人自身の生活に焦点を当てて整理します。
自分は今、何を担っているのか。
仕事や生活にどのような影響が出ているのか。
今のやり方をこのまま続けられるのか。
減らせること、任せられること、変えられることはないか。
必要であれば、整理した内容をもとに、ケアマネジャーやほかの相談先へ何を伝えるかも一緒に確認します。
介護は、足りないものを足し続けるだけではありません。
支える人が抱えていることを見直し、自分の生活も続けられる形を考えることも、介護を続けていくための方法の一つです。
詳しくは、相談ページでご案内しています。
参考資料
- 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
- 「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」第13条(指定居宅介護支援の具体的取扱方針)